通貨と税金
仮想通貨の売却益に税金はかかるのか?
ビットコインなどの仮想通貨売買では、手数料の他に税金の計算も自分でしなければいけません。売買によって利益を得ているなら確定申告をする必要もあります。ただし、全ての人が申告の対象となるわけではありません。仮想通貨の利益が年間を通して20万円を超えたときに限り、確定申告の対象となります。
所得の区分
所得税は10区分されていますが、仮想通貨の利益は「雑所得」に区分されます。なお、事業として仮想通貨を売買した場合には「事業所得」となります。
- 利子所得 預貯金の利子、貸付信託の分配による所得
- 配当所得 株式配当、証券投資信託などの収益分配による所得
- 不動産所得 不動産などの権利、貸付などによる所得
- 事業所得 商業、工業など、事業によって得られた所得
- 給与所得 給料などによる所得
- 退職所得 退職によって得た所得
- 山林所得 5年を超えて所有した山林の売却等によって得た所得
- 譲渡所得 資産を売って得た所得
- 一時所得 満期保険金などの所得
- 雑所得 上記9種のどれにも該当しない所得
雑所得には、他の所得と合わせた損益計算ができないという特徴があります。雑所得のみ黒字で他の所得が赤字であったとしても、相殺することはできません。ただし、雑所得内での損益を合算することは可能です。つまり、ビットコインで利益が出ていたが、他のアルトコインで損失が出ていた場合には合算して申告ができます。
もちろん、他の雑所得と合わせて利益が20万円を下回るときには申告の必要はありません。注意してほしいのは、株式の損益と仮想通貨の損益は合算できないという点です。仮想通貨の利益は雑所得ですが、株式を売却したときの利益は譲渡所得、配当金による利益は配当所得となります。
税金の計算方法
1BTCを60万円で購入し、70万円で売却した場合、利益の10万円に対して税金がかかります。これは単純でわかりやすいのですが、仮想通貨の取引では、計算が複雑になる傾向があります。
部分売却による利益
1BTCを60万円で購入し0.6BTCを50万円で売却、手元には0.4BTCと50万円が残っているというような場合です。この事例では、実際に売却した数量について課税対象額を算出します。1BTCを60万円で購入したということは、0.6BTCについては36万円で買ったということになります。
これを50万円で売却したので、利益は14万円です。この14万円が課税対象となります。手元に残った0.4BTCについては、この段階では課税されません。0.4BTCを売却したときの実際の損益に対して税金がかかります。売却をしない限り、課税されることはありません。
ハードフォークによる配布
ブロックチェーンの仕様が変わることで発生する「ハードフォーク(分裂)」によって、新たに仮想通貨が誕生します。このとき、ハードフォーク発生時と同数の新しい仮想通貨が自動的に配布されることがありますが、この配布された仮想通貨の購入金額は「0円」として計算されます。税金は売却時にのみかかります。
アルトコインを買った場合
1BTCを60万円で購入し、その1BTCで70万円分のアルトコインを買ったというような場合には注意が必要です。この事例では、1BTCを使用したときに70万円の価値があったので、その差益10万円に対して課税されることになります。
仮想通貨同士の取引
仮想通貨購入時の単価は、以下の式によって表されます。
購入金額総額÷購入した仮想通貨数量=仮想通貨単価
1ETHが50,000円のときに、100ETH購入した場合について考えてみましょう。取引手数料率が0.2%だったとした場合、手数料は10,000円です。従って、手数料込の100ETHの購入代金は5,010,000円になります。購入代金には、仮想通貨取引所に支払う売買手数料が含まれることに注意してください。
この事例では100ETHを購入したので、単価は5,010,000÷100ETH=50,100 となります。では、1ETHが52,000円のときに、1BTCが1,000,000円と交換した場合は、どのような計算方法になるのでしょうか。このような例では、イーサリアムをビットコインとの交換に必要な数量だけ売却した後で、ビットコインを購入したとして計算します。
まずは、イーサリアムの売却数量を算出します。1BTCは1,000,000円、1ETHは52,000円ですから、1,000,000÷52,000=19.23ETHが、売却する数量となります。手数料は同じく0.2%とすると、1,000,000円×0.2%で2,000円です。次に、ビットコインの交換に使ったイーサリアムの購入金額を計算します。
購入のために必要なのは19.23ETH、購入単価は50,100円ですから、19.23×50,100で963,423円となります。取得したビットコインは1,000,000円、購入代金は963,423円、取引手数料が2,000円なので、1,000,000-963,423-2,000=34,577円 この金額が「利益」となります。
この34,577円は雑所得、あるいは事業所得として申告の対象となるわけです。なお、複数の仮想通貨取引所を使って同一通貨の取引をしている場合には、全ての取引記録を合算して計算する必要があります。
納める所得税はいくらぐらい?
仮想通貨の売買によって得た利益に応じて納税額が決まるわけですが、どのぐらいの金額を納める必要があるのでしょうか。納めるべき所得税の税率は、下記のように定められています。
- 195万円以下 税率5% 控除額0円
- 195万円以上330万円以下 税率10% 控除額97,500円
- 330万円以上695万円以下 税率20% 控除額427,500円
- 695万円以上900万円以下 税率23% 控除額636,000円
- 900万円以上1800万円以下 税率33% 控除額1,536,000円
- 1,800万円以上,000万円以下 税率40% 控除額2,796,000円
- 4,000万円以上 税率45% 控除額4,796,000円
所得が増えれば、住民税もあがります。例えば仮想通貨の利益が300万円だった場合、所得税率は10%、控除額が97,500円なので202,500円が所得税となります。住民税は10%ですから30万円。従って、仮想通貨によって得られた利益に対する税金は50.2500円となります。なお、2037年までの期間限定で、所得税とは別に復興特別所得税2.1%がかかります。
脱税は必ず発覚する
仮想通貨の取引利益はしっかりと申告を最近では、簡単に税金の計算ができるアプリやツールなども登場していますが、それでも税金の計算はややこしくて面倒です。中には、申告をしなくてもバレないのではないかと思ってしまう人がいるかもしれません。しかし、脱税は確実にバレると思った方がよいでしょう。
ブロックチェーンには、世界中の全ての取引が記録されています。ビットコインも、ビットコイン元年の2009年以降、全ての取引を追跡することが可能です。もちろん、現時点では国税庁がそこまで調査をすることはないかもしれませんが、近い将来、法制度が整備される可能性は高いでしょう。
脱税の時効は7年です。ブロックチェーンの仕組みを考えれば、7年間を遡って取引を調査することなど造作もないことです。後々、とんでもない額の追徴課税を言い渡されることにもなりかねません。面倒でも、税金の申告は正直にキッチリと行いましょう。
節税で仮想取引の利益を確保
脱税はNGですが、節税をするのは問題ありません。例えば、個人事業主になることで経費の計上ができますので、課税対象額が少なくなります。仮想通貨の取引では、通信費やパソコンの購入代金などが経費として考えられます。
税務署から指摘されたときに、しっかりと根拠の説明ができる出費であれば、経費として掲示をしても問題はありません。上手に節税をして、少しでも取引による利益を確保するようにしていきましょう。
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